なぜ資産は「一つの国」に集中させてはいけないのか|地理的分散という考え方
「日本の資産だけ」で本当に安心なのか
多くの日本人にとって、資産運用の第一歩は日本国内の預金や、日本企業の株式を保有することから始まります。
普段使い慣れた円で管理でき、身近な企業の名前が並ぶことで、安心感を覚える人も多いのではないでしょうか。
しかし、資産のすべてを一つの国に集中させることには、見過ごされがちなリスクが潜んでいます。
本記事では、資産運用における「地理的分散」という考え方について、その重要性を解説します。
「集中」が引き起こすリスクとは
一つの経済圏の影響をまるごと受けてしまう
資産を一つの国に集中させるということは、その国の経済状況、金融政策、人口動態といった要因の影響を、資産全体でまるごと受けてしまうことを意味します。
仮にその国の経済が長期にわたって停滞した場合、資産の他の部分でカバーする余地がなければ、資産全体の成長機会を逃してしまう可能性があります。
自然災害や地政学リスクも一極集中する
経済的な要因だけでなく、大規模な自然災害や地政学的なリスクも、資産を一つの国に集中させている場合、その影響をダイレクトに受けることになります。
こうした予測しづらいリスクに備える意味でも、資産の置き場所を分散させておくことには一定の合理性があります。
地理的分散という考え方の基本
複数の国・地域に資産を振り分ける
地理的分散とは、資産を一つの国や地域に偏らせるのではなく、複数の国・地域にまたがる形で保有する考え方です。
先進国だけでなく、成長性が期待される新興国の資産を組み合わせることで、それぞれの地域が持つ異なる経済サイクルの恩恵を受けやすくなります。
「値動きの連動性が低い」ことの意味
異なる国や地域の経済は、必ずしも同じタイミングで好況・不況を迎えるわけではありません。
ある地域が停滞している時期に、別の地域が成長しているということは珍しくなく、こうした値動きの連動性の低さを活かすことが、地理的分散の本質的な狙いです。
地理的分散を実践する上での視点
先進国と新興国のバランスを考える
地理的分散を検討する際は、経済が成熟している先進国と、今後の成長が期待される新興国のバランスを考えることが一つの視点になります。
先進国は比較的安定した値動きが期待される一方、新興国は成長性が高い分、値動きの変動も大きくなる傾向があります。
自身の資産運用の目的や期間に応じて、どのようなバランスで組み合わせるかを検討する姿勢が大切です。
為替の影響も併せて理解しておく
海外の資産に投資する場合、資産そのものの値動きに加えて、為替レートの変動も資産価値に影響を与えます。
地理的分散を進める際は、こうした為替変動の影響についても理解した上で、資産全体の構成を考えることが重要です。
地理的分散を進める上での注意点
分散しすぎると管理が煩雑になる
多くの国・地域に資産を分散させることは重要ですが、あまりに細かく分散させすぎると、資産全体の管理が煩雑になり、状況を把握しづらくなることがあります。
自分自身が把握できる範囲で、無理のない分散を心がけることが大切です。
情報収集の難しさも考慮する
日本国内の資産と比較して、海外の資産に関する情報は、言語や情報源の違いから、収集や理解が難しくなる場合があります。
信頼できる情報源を確保した上で、地理的分散を進めていくことが望ましいでしょう。
地理的分散を検討する際の具体的な進め方
現状の資産配分を可視化する
地理的分散を進める第一歩は、現在保有している資産が、地域別にどのような割合で構成されているかを可視化することです。
預金、株式、投資信託など、保有している資産をひとつずつ洗い出し、それぞれがどの国・地域に関連しているかを整理することで、思っていた以上に特定の地域へ偏っていることに気づく場合もあります。
少しずつ段階的に進める
地理的分散は、一度にすべての資産構成を変更する必要はありません。
新たに資産を積み立てる際に、海外の資産クラスも組み合わせていくといった形で、段階的に分散を進めていく方法も現実的な選択肢です。
急いで結論を出そうとせず、自分自身のペースで理解を深めながら進めていくことが、長く付き合える資産運用のスタイルにつながります。
まとめ|世界に目を向けることが、資産を守る一歩になる
資産をすべて一つの国に集中させることは、その国特有の経済状況や予測しづらいリスクの影響を、資産全体で受けてしまうことにつながります。
地理的分散という考え方を取り入れ、複数の国・地域に資産を振り分けることで、特定の地域に依存しない、より安定した資産形成を目指すことができます。
まずは、自分の資産が今どの程度、特定の国や地域に偏っているのかを確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。世界経済の全体像に目を向ける習慣そのものが、資産形成における新たな視点を育ててくれるはずです。日頃からニュースや経済指標に触れる際も、国内だけでなく世界の動きを意識してみることをおすすめします。